世界でいちばん 不本意な「好き」



「新田くんは高1?」

「そうです!アリスさんは?」

「わたしは高3です」

「年上だ。じゃあ敬語外しちゃってくださいね」

「うん。どこの学校?」


教えながら気まずい雰囲気にならないように雑談。学校はチウガクの隣の都立高校だった。


「アリスさんチウガクの制服似合ってました」

「もう3年も着てるからね」


ワンピースタイプの制服。お嬢さまみたいなデザインが入学したてのころははずかしかった。チウガクだってすぐにわかるし。だから時間があるときは着替えてからバイト先に向かってる。


「ほかにもバイトするの?」

「とりあえずはコンビニがんばって、あとは短期でイベントバイトとかしようかなって思ってます。オレ、男だけどピカロ好きなんでピカロのイベントスタッフとかになれたら最高だな~って」



突然の、最近聞き慣れ過ぎたアイドルグループの名前にひくりと喉が鳴った。


「へ、へえ…えっと、誰が好きなの?」

「みんな好きなんですけど、憧れは史都です!かっこよすぎ!」


ピタリ賞。まさかこんなところでもあのひとの名前を聞くなんて。

頭では国民的アイドルグループだってわかってるけど、もしかしたらピカロって、ふみとって、わたしが思っている以上なのかもしれない。


それにしても、高校生の同性にも憧れられてるなんて。うちの学校にもいるのかな。


「アリスさんはピカロで誰が好きですか?」


好きなメンバーがいるのは当たり前、みたいな問いかけ。

どうしよう。けっこうな熱量で話してくる初対面の人に、だれも好きじゃないどころかよく知らないなんて言える?


「ちなみに僕も史都だよ~」


バックヤードから店長の声がする。うそ、店長も好きなの?しかもふみと。

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