世界でいちばん 不本意な「好き」
ふみと以外のメンバーの名前が……もう少しでだれかしら思い出せそうなんだけど、ぜんっぜん出てこない。
だけど目の前の子犬みたいな年下男子はきらきらした瞳で返事を期待してる。とてもじゃないけどわたしには本音を言うことができない状況だ。
せめて店長がちがうメンバーの名前を言ってくれてたら…。
「わ、たしも、だれかって言われたら久野史都、かなあ…?」
「え!マジですか!?」
う。心が痛い。だけどこれは優しい嘘…優しい嘘。
そう、嘘。ぜったいに嘘。
「あまり詳しくはないんだけどね…」
「同じバイト先に同じ芸能人が好きな人がいるなんてめっちゃうれしいです!」
そういうものなのか?
たしかに紗依とあっこのピカロに対しての団結力みたいなものはすさまじく感じる。とくに紗依はわたしじゃ会話の相手にならないから最近あっこと話すのが楽しそうだ。
「バイトが一気に楽しくなりました~。店長さんもアリスさんも良い人です。史都が好きな人に悪い人いないんです」
それはちょっとどうかわからないけど。
「なんで会ったこともないし、自分の名前も知らない相手にそんな信頼できるの…?」
わたしは会ったことがあっても、自分の名前を知っている人でも、うまく信じられないのに。
「史都がそうさせてくれるんです」
きっぱりとした返答。
「史都は本当にファンをものすごく大事にしてくれてるんです」
「……」
あっこと同じことを言う。
大事にしてる。
そういうこと、たとえ目の前にいるひとであっても言葉にしたり、態度にしたり、伝えるのってむずかしいことだと思う。なんだってうわべで言えるもの。