世界でいちばん 不本意な「好き」


ショーマは、てっきり久野ふみとも同じだと思ってた、と言いたいんだと思う。


「ああいうやつが好きになるのってどんなやつなんだろ」

「……」

「きっとああいうやつがするような恋愛を本気の恋だとかなんだとか言うんだろうな」

「……」


ああいうやつ、なんて似合わないような言いかたをする。

まるでうらやましさを含んだような口調。


「ショーマは、わたしと自分は同じだと思ってるんだろうけどさ」


いつの間にかコンビニの前まで来ていた。

ギターを背負っているからたぶんこれからスタジオ練習なんだと思う。最近ずっと持ち歩いてること、知ってるよ。ちゃんとがんばろうとしてるんじゃないのかな。



「ちがうと思う。だってショーマは、わたしのことを、寧音を好きになったからって振ったもの」


「アリス、」

「おこってないよ。うらんでもないし、落胆もしてない。ただ、あのとき、ちょっと衝撃だった」



わたしもショーマとはどこか同じな気がしていたから。

寧音の何がショーマを変えたんだろう。


ふたりが別れてからはなおさら、あのころとは変わったショーマが見えてくる。



「じゃ、明日。バイト入れないで見に行くんだからミスんなよ」


わざと強気なことを言って、よけいなことを言われる前に踵を返した。



勝手に同じだと思って、勝手に一番にしてくれると思って、勝手にくるしくなる。


そういうのから抜け出した自分のこと、もっと可愛がってあげたらいいのに。なんて、くやしいからそこまでは言ってあげない。

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