世界でいちばん 不本意な「好き」
…だけど、簡単に、変われないよ。
わたしは、変わることを望んでない。ショーマとはちがうんだよ。
はあ、と。
大きく長いため息が後ろから聴こえた。
「なにしてんの、あんたたち。目立ってるよ」
「佐原さん」
ふみとの目線をたどって振り向くと寧音が呆れた表情を浮かべていた。
「あんたたちの言い合いが頭に響いたんだけど」
あれ、なんか、目が充血してる。
「もしかして寧音、」
「熱?」
いつの間にかショーマのほうが寧音の近くにいて、その華奢な首元に手の甲をくっつけた。
「う…わっ、あっつ!」
そのあともぺたぺた、寧音のあちこちを触って体温をたしかめては心配げな目で彼女を見ていた。
わたしの熱が移って悪化したんだ。
「熱あるのになんで来たんだよ」
「だって…バンド、あるじゃない」
責任感が強い。
自分のことは後回し。
小さいころから変わってない。変わらないのは、ショーマが大好きな寧音のことだよ。
赤い目と視線が合って、思わず反らした。
「…代わりに出て」
「誰に言ってんだよ」
わたしに言ってるんだよ。
ふみとの背に半分身を隠しながら首を横に振る。
「あんたが移したんでしょ」
きっかけは寧音が勝手に優しくしたからだ。
「譲ってあげるって言ってんの。いじらしく練習覗いて、うらやましそうに見てたじゃない。やりたいならやれば?」