世界でいちばん 不本意な「好き」
飲みものみたいにわたしのこと、一途に好きでいてくれたらよかったのに。
「で、寧音とは?」
「少し前から別れ話にはなってたんだけど、一応、正式にはまだ」
「…そ」
どっちからとか、どういう理由で、とかは聞くつもりない。興味もない。
混む時間じゃないにしてもそんなに時間はとれないし。
「おれのことは良くて。それよりふみとが言ってたよ」
いつの間に呼び捨てする仲になったのか。
男の子って、すごい。恋愛なんかじゃ壊れないらしい。
「食堂断られたって。だから、アリスはあまり金使いたくないからでふみとのことが嫌ってわけじゃないと思うって言っといたから」
ショーマはわたしがあの異物にも猫をかぶってると思ってるみたい。
「べつにいいよ。なんか、あのひとの前だと上手く取り繕えなくて、本性バレてると思う」
「え、そうなの?「俺といると注目されるから嫌だ、みたいな理由じゃなくてうれしかった。アリスが一番最初に、俺をただの高校生として見てくれた」ってうれしそうに言ってたからてっきり上手いことやってんのかと思ってた」
「は……」
『でも仲良くないひとと一緒にごはん食べてもおいしくないし、お金の無駄です』
そう言ったけど…嫌味ったらしい性格の悪い言葉だったのに、そんなふうに思うのか。
プラス思考なのかな。
それとも、思い込みたいのか、信じたいのか。
都合が良くて嫌になる。
「浮いてるけど、すげーかっこいいし、はっきりしてるし、案外付き合いやすいやつなのかもな」
「……」
「じゃ、バイトがんばれ」
ホイップを多めに入れて作ってあることをしっかり確認して、満足のいく量だったのか、何も言わずにテイクアウトしていった。
元カレのことを気にするような人間じゃないことはバレてるらしい。
代わりに自分の彼女のせいでうわさになってしまった人を、まわりくどく、一番人気のわたしにフォローしにきた。それだけ。
そういうところ、好きだったのになあ。
せめて幸せそうにしてくれてるほうが、ずっと良かったのに。