世界でいちばん 不本意な「好き」




フォローされたって、わたしがどうこうできることなのか。

するべきなのか。メリットはあるのか。


けっきょくそういうことばかり考えてしまう。

とにかく面倒なことは避けたいんだ。


いつものように洗濯物を干そうとベランダに出て、真向いのベランダに異物がいてはっとした。時間ずらすのわすれてた…!


昨日はわすれなかったのに!

見つかる前に退散しよう、とすぐさま部屋の中に戻ろうとしたら「アリス」と呼び留められた。手を振られる。気づかれた…。



「…なに」

絶対聴こえないくらいの声でつぶやいたのに。


「そういえば、アリスに言いたいことがあったんだけど」

「え…」


昨日、言いすぎたから言い返される?


「や、あのさ。アリスって、親切で、気遣いできて、みんなの気持ちわかろうとしてて、しっかりしてて、思い出のもの大事にできる子じゃんね」



いや、だから──── わたしの、なにがわかるっていうの。

なんで、わかったような、自信満々な声色で言えるの。



「そんな子ならいちばん大好きになるやつ、絶対いるっしょ。俺、そう思うよ」

「……っ」


ベランダの柵に頬杖をついて、余裕げに、無邪気に、真っ直ぐに、何の裏表もなく、得意げに……喩えようのない笑顔で、失恋したわたしを、いっちょまえに励まそうとしている。



「…で、ここからが本題なんだけど……」

「わたし!そんな人間じゃないから!見当違い!あんたなんてどうでもいいし、クラスの人も、ショーマのことも、どうでもいいの。汐くんのことだって…もうぜんぜんどうでもいい。自分のことだけが大事なの。だから、だから、そんなふうに言わないで!」


すごく、みじめだ。

何も知らないくせに。わからないくせに。知られたくない。わかってもらいたくない。


みじめ。
だれの話してるの。

洗濯物を置き去りにして部屋に逃げ込む。


「調子がくるう……」


自分のことだけが大事。
ほかの人のことなんてどうだっていい。

そんなこと、関係のない人に言うつもりなかったのに。

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