世界でいちばん 不本意な「好き」
ぐるぐると考えていたら、騒がしかった教室が鎮まる。
異物。此処にいること自体がおかしな、久野ふみとが登校してきた。
彼はめげない。
あきらめても、居づらくても、ファンを待たせてまでして優先した自分の思いをまっとうしようとしている。
隣の席に向かう彼をみんなが息をひそめて追う。
まるで本当に異物を見てるみたい。
「アリス」
そんななか声をかけられ、思わず肩が持ち上がった。
席に座らず、背の高い彼はわたしの机の横にしゃがみ込み、こちらを覗き込むように見る。
周りなんてお構いなし。
堂々と。
そりゃそうだ。このひとは後ろめたいこと、何ひとつしていない。わたしはそう知っている。
「迷惑かかるから本当は朝言おうと思ったんだけど…」
はっきりしてる。
素直すぎる。
「俺ね、アリスと仲良くなることだけは、あきらめたくないなって思ってる」
─── 意外と淡泊なんだね。あきらめちゃうんだ。
昨日言ったわたしの言葉への、真っ直ぐ、ただわたしにだけ向けられた回答。
「見当違いだってアリスは言うけど、そうやって自分のこと謙遜してるところも、良いところだなって思うよ」
「ちょ、」
「とにかく。みんながアリスのこと好きなように、俺もそうなっちゃったから」
「や、やめ、」
「お隣りさんのお向かいさんのよしみで、仲良くなること、検討してよ」
ああ、こんなことなら、朝聞けばよかった。
最悪な展開。みんなの前で、こんなプレミアムな人に、まるでプレミアムな扱いをされてしまった。