世界でいちばん 不本意な「好き」
「ちょ、いたい、アリス」
「うざいからこっち見ないで」
「見ない、見ないから、いたいって」
「授業に集中しなよ」
「アリスだって集中しなよ」
「集中しなくさせてくるのはそっちでしょっ」
だれの所為だと思ってるの?
わたしはわたしで、なんでこんな気にしちゃうの?
「おーいそこ、仲良いのはいいけどじゃれ合うな」
励くん先生がからかってきて、教室中の注目を浴びる。やめてください…。悪目立ち。久野ふみとのせいだ。
「じゃれ合ってないです!」
「仲良いです!」
「仲良くないからっ」
「仲良いよ。昨日だっておなじ傘で帰っ──」
「わー!」
うるさい!
またノートを押し付ける。
「ぐるじいっ」
もう窒息してしまえ、ばか。
あんな時間に日傘差してその狭い空間のなかで一緒に帰ったことなんておおっぴらに言うやついるか…!
頭が痛い。
なんでこんなに危機感がないの?
このひとがいると、何かに集中することすらままならなくなって、とても迷惑だ。
突っかかってしまう。仲直りしても、苛立ちを訴えても、それでも久野ふみとの言葉行動のひとつひとつが気になって、気にした結果気に障る。悪循環ってこういうことだと思う。
体育着に着替えながら深いため息をついていると「アリスと史都が仲良しにもどってよかった~」とあっこに言われた。そう見えるのか?
「仲直りはした、から、元にはもどったけど、そもそも仲良くないからね」
「仲良いよ。アリスと話してるときの史都、プライベートって感じがする」
その口ぶり、意外と、テレビの向こうにいるときと今とじゃ雰囲気がちがうらしい。そうは思えないけどなあ。うざったいくらい素直なんだもん。
「そのプライベートな史都を見られるなんて……同じ学校最高……!」
どうやらあっこは緊張を乗り越えてそういう目線でいることに決めたらしい。独特すぎない?