世界でいちばん 不本意な「好き」
気持ちはわからないけど、好きな芸能人がいて、そのひとが近くにいるようになったらうれしいものなのかもしれない。久野ふみとが望んでいるかたちではないだろうけど前進はしてるんじゃないかな。
ほかの生徒たちからの視線も、好機や煙たいものから、少しずつだけど何か、興味みたいなものに変わっていってる気がする。
これをあのひとが気づいてるのか、どう思ってるかは知らない。
「そうだ!アリスお願い!明日のお昼休み、可愛くヘアアレンジしてほしいの」
「あ、あたしもお願いしたいな」
「いいけどどこか行くの?」
「「ピカロのイベント!」」
きらっきらの瞳でこっちを見たあっこと紗依からちからいっぱいの返事が返ってくる。
ピカロのイベントって。
「早退するの~。励くん先生にも特別おっけーもらいズミ☆」
いや、担任、だめでしょ。
「補習はあるけどね」
「そうなんだ。励くん先生さすがだね。でもあっこ、久野ふみとはいないのに行くの?」
「当たり前でしょー!史都が最推しだけど、うちはピカロみんなが大好きなんだからっ」
みんなが大好き、なんて、いっそうわからない感情。
午後の授業より大事なことなの?
いつもよりテンションが高い状態で校庭に向かうふたりの背中を見ながら、一番がいるのに他にも目がいく気持ちは、やっぱりわからないなあと思った。