あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
ただ、再就職が決まらないことや東京を出ることは言わなかった。
暗くなりすぎて楽しいお酒が不味くなると思ったからだ。
悠一さんは私の話が終わるまで何度も頷きながら黙って聞いてくれた。
話し終えると悠一さんは真っ直ぐ私をみて
「君はまちがってないよ……」
と言った。
「え?」
「俺も君の立場なら同じように行動しただろうね」
会社を辞めると決めた時、みんなが私の退職を止めようとした。
それはプロジェクトを途中で投げ出されては困るというのと、みんな少なからず同じ経験をしているのだから多少の犠牲は仕方がないということだった。
悠一さんみたいに賛同してくれる人は誰もいなかった。
確かにみんなの意見はもっともだと思う。
だけど先生のやってることが間違っているのをみんなわかってて見て見ぬふりをしてるのがやりきれなかった。
そして何より、他人のデザインを勝手に使ってさも自分がデザインしたと我が物顔で取材を受けている先生に失望したのだ。
そんな気持ちを誰もわかってくれないうえに新しい就職先も決まらない。
私は自暴自棄になり、もしかして自分の考えがおかしいの? とまで思うようになった。
だけど初対面にも関わらず、私の気持ちを理解してくれる人がいたことに胸が熱くなり、
目頭が熱くなった。
だけどこんなところで涙なんか見せちゃいけない。
私は唇を噛み、涙を堪えた。
「ねえ、大丈夫? 俺……気に触るようなことを——」
私は首を横に振った。
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