あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
どうしよう。やっぱり気づかれてる。
黙っていると、彼は話を続けた。
「だって、柊一の一って俺の名前から——」
「何を言ってるんですか?」
「え?」
ここで認めたらいろんな覚悟や決意が全て無駄になる。
「この子の父親は……元彼です」
「でも!」
「もしこの子があなたの子だったら再会した時に言ってました。でも言えなかったのはあなたの子じゃないから……」
彼は納得できない様子で眠っている柊一を見つめていた。
「この子のこともあって悠一さんといてもどこか罪悪感があった。だからもう、あなたとはこれっきりにしたいんです。お願いします」
わたしは深く頭を下げた。
彼がわかったと言ってくれるまで頭をあげるつもりはなかった。
これでいい。
私や柊一の存在が彼の将来をダメにするかもしれない。
それに偶然にも彼が柊一を抱っこしてくれた。
それで十分だ。
彼はしばらく黙っていたが、諦めともいえるため息とともに「わかった」と短い言葉を残すと病室のドアノブに手をかけた。
そして私に背を向けると、小さな声で「元気で」そう言い残して部屋を出ていった。
私は力が抜けるように肩を落とした。
これでよかった。
そうだよね?
これで……。
自分に言い聞かせた。
だけど意に反し、大粒の涙が頬を伝った。
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