あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
彼は驚いた様子で私の話を聞いていた。
あの時は初対面の人に話すことではないと思っていたから敢えて話さなかった。
「じゃあ、俺とであったあの日は……」
「あの日が東京での最後の日だったんです。次の日にこの島へ」
「……じゃあ、どれだけ待っても君が来ないわけか」
彼は大きなため息をついた。
「でも……私は後悔してません。短い時間だったけどあなたとの時間はいい思い出になりました」
私はあなたからもらった大切な時間で柊一を授かった。
本当に感謝しきれないほどの大きな宝物をもらった。
だからこれ以上、何かを求めてはいけない。
彼には婚約者もいるのだから。
「なるほど、俺とのことはもうすっかり過去のことになってるんだな」
悠一さんが御曹司じゃなければもっと違う選択があったかもしれない。
だけど、過去と割り切らないと、近くにいればいるほど気持ちが大きくなってしまう。
すると、炊飯器から炊きあがりを知らせる音が聞こえた。
「じゃあ、私はこれで失礼します」
「……ああ。今日はありがとう。明日もよろしく頼む」
「かしこまりました」
悠一さんは苦笑いをしながら冷めてしまったコーヒを飲んだ。
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