あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
彼女は急いでいるかのように車に乗りこみ走っていった。
『いい思い出になりました』
彼女の中で俺とのことは過去のものになっていた。
だが、それを責める権利が俺にはなかった。
彼女を思い続けながら、別の女性と結婚をするのだから。
どうすることもできないことはわかっているのに、この運命を変えられることができないもどかしさ。
だがそれ以上に、彼女が抱えていた問題を全く知らなかったことがショックだった。
彼女のデザインを別のデザイナーの作品として発表され、そのことを抗議した彼女は仕事を辞め、別の場所で自分の夢を叶えようとした。
だが、そんな彼女の夢を妨害した。
夢をもって上京したのに……夢を継続できなかった彼女の気持ちを思うと胸が痛い。
だが初対面の男にこんなことを話せるわけがないこともわかる。
俺がもし彼女の立場なら初対面の人間に話したりはしない。
彼女がどんな思いでこの島にきたのか……。
やりきれない想いに胸が痛くなる。
もっと早く彼女と出会っていれば、俺は政略結婚もなかったし、彼女を助けられたかもしれない。
< 69 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop