死なないあたしの恋物語
「千奈がそういうなら、俺はいいけど」


洋人君は納得いかない様子だったけれど、しぶしぶうなづいてくれた。


真夏と綾もそれで一応は納得してくれたようで、ホッと胸をなでおろしたのだった。


「どうしてあの2人を許しちゃうの?」


給食が終わって思い思いの時間を過ごしていると、真夏がふくれっつらで聞いてきた。


あたしたち3人は今教室のベランダにいる。


「特に悪いことをしてるわけでもないしさ、そんなに怒ることないかなーって思って」


それに、後ろ姿をとられてしまったのはあたしの落ち度だ。


気をつけなきゃいけなかったのに、舞い上がってしまった。


「盗撮は十分に怒っていいことだと思うよ?」


綾が真剣な表情で言った。


「そうだね。でも、あれは本当にあたしの後姿じゃないからね?」


「それはわかってるけど……」


綾がうつむいたとき、「その話はもう終わったんだろ?」と、窓の向こうから洋人君が声をかけてきた。


「ひ、洋人君」


思わず声が裏返ってしまった。


急な出現は心臓に悪い。


洋人君が声をかけてきた途端、真夏の表情がニヤけるのがわかった。


「でもまぁ、なにかあったら言えよ? 俺にできることがあれば、なんでも手を貸すから」


「う、うん。ありがとう」


洋人君の言葉に、あぁ、やっぱりあたしはこの人のことが好きなんだなぁと、再確認するのだった。
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