【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「桜栄は、金ならば幾らでも出すと言っている。 もちろんこちらの条件を呑むのなら。
お前には給料の他に、一ヶ月間この仕事を引き受けてくれるならば特別報酬を出そう。」
あ、足が動かねぇー…! 今すぐこの事務所から出て行って、よどんだ空気じゃなく爽やかな日曜の昼の外の空気を吸いてぇのに…!
金とは偉大だ。その前に頭は上がらない。
分かっている、この狸親父の事だ。俺に提示した数倍の金を桜栄の社長から報酬として貰うに違いない。
かなりピンハネをするつもりなのは分かっている。 だが目の前に提示された金額は、とても魅力的だ。 心とは裏腹に足は事務所内へと戻って行く。
「その金額に…嘘はねぇな?」
ディスクの椅子をくるくると回す親父の口角が上がる。
いやらしい顔をして、小さくほくそ笑んだ。
「約束はする。最低コレだ」
九月の終わり。
指のいやらしいマークで、俺は最悪な親父と桜栄の社長に心と自分の時間を売った。
それがそもそもの間違いだとは気が付かず。