【完】嘘から始まる初恋ウェディング

これでも一応は大企業をまとめ上げる社長だ。 俺の前で情けなく肩を落とし、助けを乞う。

そして彼は依頼人。 馬鹿馬鹿しい怪文書を真に受けて、莫大な依頼料を支払う。…俺にとっては、良いお客さんだ。

今日に備えて、高そうに見えるスーツを新調した。 こうやってスーツを着て、髪を爽やかな好青年風にセットをすれば俺もそれなりに見える。

容姿だけは昔から良い、と言われモテた。 親父の遺伝子とは信じたくはないが、確かに若い頃の親父と俺はそっくりなのだ。 そして今ではただのヤーさんにしか見えない親父も若い頃は相当モテたそうだ。

桜栄社長に取り繕った笑顔を作り、少しだけ心配そうに眉をひそめる。

「心中お察しいたします。
そんなに素敵なお嬢様ならば、変な虫がつかぬか心配なのはよぉーく分かります」

俺の言葉に、桜栄社長は両手をぎゅっと握りしめた。 情けなく目には涙を溜める。 …こんな父親嫌だ。

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