俺が優しいと思うなよ?
……安心して、いいんだ。
自分の中でほわりとあたたかな気持ちが生まれる。
「詩織のことは、もう勘違いするなよ」
「はい、わかりました」
私の返事で納得したのか、成海さんは「風呂入ってくる」とリビングを出ていった。
黒いソファで一人、天井を見上げる。
「私、ここに泊まってもいいんだ……」
成海さんは「寝に帰るようなものだ」と言うには部屋はスッキリと片付いて居心地がいい。
ぼんやりとしていたが、ふっとスケッチブックを持って来ていたことを思い出した。
何かが頭に浮かびそうな気がする。
ローテーブルの上にスケッチブックを広げて紙の上で鉛筆の芯ををトントンと落とす。
「成海さんのいない今なら」
と、教会のデザインを考える。
仁科係長は「どんな教会で結婚式をしたいか」と私に聞いた。それで思い出したのは、キヨスクで働いていた頃に従業員の若い女の子が結婚退職をしたことだった。
彼女は結婚後に退職の挨拶と一緒に結婚式の写真を持ってきた。教会の前で参加者全員と撮影した集合写真だ。
「確か後ろに建っていた教会は……」
朧気な記憶を頼りに、スケッチブックにサッと線を描いていく。建物入り口の柱は薔薇のような花の彫刻がある特徴的なものだった。真っ白な建物で扉には花嫁の持っていた同じピンクの花のリースが飾ってあった。建物自体は他に特徴のないシンプルなものだったと、今になって「うん、うん」と頷く。