俺が優しいと思うなよ?
「悪い、遅くなった」
あたふたする私へ、成海さんがスマホを片手に足早にやってきた。いつの間にか力を入れていた両肩がスッと下がる。
成海さんは私を見ると目を丸くして少し驚いた顔をしたが、すぐに「ああ、そうだ」と言ってジャケットのポケットから何かを取り出した。
取り出した手のひらサイズの箱を開けると、綺麗なパールのネックレスが潤んだ輝きを放っていた。今度は私が目を丸くする。
「これは」
「いいから。後ろを向いて」
成海さんに言われるまま後ろをむく私の首筋に、彼のすこしひんやりした指先が触れた。
──恥ずかしい。
首周りに感じる重みに視線を動かす私に、成海さんは私の正面に立つ。首のネックレスを見てるのだろう、こんな地味な私に似合うわけないのに。
そんなネガティブなことを思っていると、
「うん、似合う」
と彼はそう言って、私の首元を見て満足そうに頷いた。
──ドキドキする。
成海さんは私の肩を軽く抱き寄せ、私は更に全身で動揺して一歩踏み出すパンプスもガクガクする始末だ。近くで私たちを見ていた受付の女性も成海さんのスマートな身のこなしに顔を赤らめている。
受付を済ませて会場へ入っていく。
成海さんは私の肩を抱く腕が腰へと移動した。そして細くもない腰が彼の手によって引き寄せられる。
「な、成海さん。ちょっと……」
少し離れてみようと足に力を入れてみた。成海さんが耳元へ唇を寄せてくる。
「許せ、牽制だ。お前を見ているエロおやじたちがいる」
「え?」
振り向こうとした私を、成海さんは再び抱き寄せる。
「振り返るな。その格好は俺だけ見えていればいいんだよ」
面白くなさそうに小声で捨て台詞を吐くのに、腰を抱くその腕はとても優しく感じた。