俺が優しいと思うなよ?
「お姉ちゃん?」
ホールに出たところで声が聞こえた。
「やっぱり、お姉ちゃんよね?」
私の正面に回り込んできた相手と視線が交わる。
実家に住む妹とはしばらく連絡を取っていなかったが、まさかここで会うとは思っていなかった。
「……楓」
綺麗にセットされたブラウンの髪、大きなシルバーのピアス、そして大人しめなパステルグリーンのドレスに身を包んだ妹の楓が立っている。血の繋がった姉妹だが、彼女は私と違って小顔で目元がキリッとした華のある美しい顔立ちをしている。
久しぶりの再会だというのに、彼女は私に泣きも笑いもしなかった。
「どうしてお姉ちゃんがここにいるの?もしかして大政建設に転職したの?そういえば、お姉ちゃんのドレス姿を見るのは初めてだわ」
と、何かを探るような目つきの態度に私も眉を潜めた。
私は可愛げのない妹に「ふぅ」と息を吐いた。
「私のいる会社が大政建設と関わっていてパーティーに招待されただけよ。楓こそどうしてここに?」
「私はお父さんの代理よ。大政建設のメインバンクがお父さんの銀行なの。今日はどうしても外せない会合があるとかで、私が代わりに大政建設の社長さんに挨拶に来たってわけ」
父親が楓に代打を頼むあたり、あの人がいかに楓を可愛がり信頼しているのかが窺える。しかしそんなことは、何年も前に家を出ている私には気になることではなかった。私は「そう」とだけ答えた。