俺が優しいと思うなよ?
都市開発事業の話が動き出す。
建物のデザインはエントリー制の募集で、プレゼン形式のコンペが行われ20名ほどの審査員の投票で決定される。
我が社は会議で低層マンションと教会のコンペにエントリーすることになった。低層マンションは春にうちのチームに転属してきた建築士、仁科雅哉係長が担当することになった。
そして。
「教会は成海くんに任せるよ」
「はい」
任されたからには妥協は一切ない。全力を尽くすのみの仕事をする。
教会の敷地図面を広げる。前面に広い公園があり、遊歩道を挟んだ敷地は教会の広さには十分だと思った。
──公園は自然を生かす憩いの場、というコンセプトだったはず。
ならば、その空間をもっと大きく、地面から空までを一枚の巨大な絵画のようにしたい。そんな漠然とした考えが浮かんだ。
しかし、今までナチュラルな建造物や外構は手掛けたことはあっても今回は規模が違う。
あれこれと参考になる資料を揃える。
「部長、この資料もよかったらどうぞっス」
と、部下の町田総二郎が人懐っこい軽い口調で、エクステリアのカタログを何冊か持ったきた。彼は担当ではないが頼りになる男だ。
「ありがとう」
検索事項を画面で確認しながら頷く。キーボードを叩きながら今後の工程を考えていく。敷地が見に行けるようになれば、すぐにでも行って確認したい。
「デザインの見当もつけておかないと」
と、動かす手が止まる。
頭に浮かんだのは、おかっぱ頭のはにかんだ顔。