俺が優しいと思うなよ?
玄関まで二メートルほどのところで鎖のせいで進めなくなった。
私は振り向いでリビングで私を見ている西脇に言った。
「鎖を外してください」
「ダメだ。諦めて科学館のデザインを描け」
「嫌です」
西脇は呆れたように両肩で息をすると近づいてきた。足首の鎖で身動きがとれない私は腕を掴まれた。
「離して!」
「玄関で大声を出すなよ。といっても隣は空き部屋だけどな」
と、彼は腕を引っ張って歩き出し、私は引き摺られるように部屋に戻される。床で足が滑って「ガツンッ」と膝を思いっきり打ってしまった。
「っ!」
痛いと思っても、西脇は構うことなく腕を引っ張り座り込む私を引き摺る。そして力一杯腕を引き上げられ椅子に座らされた。腕がちぎれるかと思った痛みに泣きそうになったが、それより無表情の西脇の見てまた腹が立ってきた。
西脇は私の肩に手を置き、グッと力を入れて掴んだ。
「いっ?!」
その痛さに顔を歪ませて呻く。
「三波、よく考えろ。お前はここにいること自体、成海や響建築デザインから疑われる立場だ。誰も信用してくれないお前が、どうやってあそこで仕事していくんだよ?響にいた二ヶ月間のお前の価値など、たかが知れている」
──私が、響で仕事をした価値……。
そうだ。
元々私は都市開発に必要な建築デザインを描くために、響社長と成海さんにスカウトされた。
入社したものの、デザインが描けない私を成海さんはずっと待っててくれた。やっと完成した図面だが、成海さんがちゃんと確認してくれたかどうかわからない。
でも妥協のない自分の納得した教会がデザインできたことに後悔はない。
そして、あのデザインは私一人のものではない、仁科係長をはじめとしたチームのメンバーからアドバイスをもらったり協力があったおかげなのだ。仁科係長、町田さん、桜井さん、倉岸さん、そして成海さん。彼らがいたからこそ、あの会社で仕事ができたのだ。
あの教会のデザインは、響建築デザイン設計事務所での大事な大事な宝物だ。