俺が優しいと思うなよ?
そういえば。
私は思い出したことを頼りに、歩き始めた。リビングのドアを開けて手錠と鎖の金属音と一緒に足を進める。
──確か、玄関のすぐ横は西脇さんの寝室だったような……。
と、トイレと浴室だったと思うドアを過ぎて三歩ほど歩いたところで鎖が「ギチッ」と長さの限界を訴えた。
「う、うそっ」
あの部屋にもしかしたら自分の荷物があったかもしれないのに、そんな希望も手を伸ばしてもドアノブにも届かない現実に散ってしまった。
この部屋には固定電話がない。
私はパソコンに目を向けた。
「もしかしたら……!」
テーブルのノートパソコンを起動させ、インターネット回線で誰かと連絡が取れるかもしれないと画面見る。
「……え?」
モニターにあったのはCADのソフトのみで、インターネットに接続されているかどうかは私の拙い知識だけではわからなかった。
この部屋から出ることも、連絡することもできない。
「そんな……私、本当に監禁されたってこと……?」
ぺたんっと、力無く崩れるように座り込む。
元上司のあまりにも強引なやり方に、気持ちが沈んでいく。
それだけではない。
ここは、ヴェール橘にいた頃の私がストレスと疲労でおかしくなって狂っていった場所なのだ。
──こんなところに、いたくないのに。
脳内に甦る記憶に逆らうことができない。
次々と浮かんでば消える映像に、両手で頭を抱えた。
「お願いっ、やめてっ!」