俺が優しいと思うなよ?
成海さんが今どうしているかは、あのパーティーの夜からわからない。きっとなんの報告もない私に怒っているかもしれない。それとも私のことより猛アプローチされた詩織さんに絆されて再び恋人として付き合い始めているかもしれない。
本人は「恋愛感情はない」とキッパリ否定していたけど。
──……まさか私を探している、とか?
「……それは、ないかな」
こんな時に自惚れな気持ちは捨てよう。
多分彼は事務所で私がいないことにイライラしながら図面に目を通しているだろう。
成海さんの目的は、なかなか発揮しなかった「私の才能」なのだ。デザインが完成したので、私はお役御免になるかもしれない。例えそうなったとしても、私はヴェール橘に戻りたいと思わない。
またキヨスクで働いている方がいくらかマシだ。
時計が時を刻んでいく。
西脇の言われるままに流されていくことを拒んで食料に手をつけず、科学館に関することも何もせずにただ椅子に座って窓の外を眺める。
私の頭にあるのは、何とかしてここから出る方法がないか思いあぐねている。
会社の始業時間はとっくに過ぎている。
出社しない私を、みんなはどう思っているのだろう。
──私がこんなことになっているなんて、会社のみんなは露ほども思っていないだろう。