俺が優しいと思うなよ?
腕の力を緩めることなく、西脇は目を細めで顔を近づけてくる。
「俺はいつだってお前を喜ばせることができる。また、あの甘ぁい声を聞かせてくれよ?」
聞くに耐えられないセリフに、
「やめてっ!」
と、やっとのことで彼を押し離した。といっても、距離感は手を伸ばせば届いてしまうほどだ。
「……」
西脇を睨み続けながら、じりじりと足を少しづつ後ろへ動かす。
「聖……」
困り顔を浮かばせて微笑む彼は私を見ているが、その目元が笑っていない。
──彼は怒っている。
かつて一緒に仕事をしていたのだ、あの顔は部下が思いどおりに仕事が出来なかった時に「仕方ないな」と見せる顔。その直後、部下には弁解の余地もなくサッと他部署に異動の辞令が出たり、いつの間にか退職してしまっていたことがあった。
あの笑みの裏側を知っているのは、私を含めた数少ない上層部の人間だけだった。
その笑顔が、今は私に向けられてる。
──一体、何を企んでるの?
西脇はスマホを取りだし、画面を私に見せた。半裸で眠る私が写っている画像。
「っ!それはっ!」
慌ててそのスマホを取り上げようと、再び西脇に近づき手を伸ばした。
「ピコンッ」
スマホからの音に、イヤな予感とともに動きが止まる。
「……」
彼は私にスマホの画面を向けて口角を上げた。
「今、成海のパソコンに送った」
「あ……あ……」
頭の中が真っ白になった。全身の力が抜けてしまい、その場に崩れ落ちていく体。
──あの人にだけは、見られたくなかった。
成海さんがアレを見れば、きっと私が西脇とまだ繋がっているんだと思われてしまう。
「ひどい……」
怒りと悔しさと悲しさと、そして一番の原因である自分の弱さに腹が立ってくる。