俺が優しいと思うなよ?

「どうして、成海さんを巻き込むんですか。あの人は初めから、何も関係ないのにっ!」
西脇への怒りと自分への怒りでおかしくなりそうなくらいの大声を張り上げた。
彼はさっきまでのへらりとした顔から人を見下すような冷めた目で私を見下ろしている。への字に閉じていた口を開いた。
「俺はお前のためを思って言ってるんだぜ?科学館のデザインはお前の好きなようにすればいい。俺がそれを気に入れば、いくらでも大政建設に売り込んでやる。俺たちのコンビ復活記念だ」

「嫌です」

「成海だって、今頃あの写真を見てお前を蔑んでるだろうよ」
「……」
自分の過去の過ちと、西脇の意地悪な言動に感情がどろどろと渦を巻いている。

「お前の居場所はここだけだ。一時離れていようと、俺たちは一緒にいる運命なんだよ」

──違う。違う。

私は当時、西脇と一緒にいたから自分を見失ったのだ。あんなに堕落した自分になるくらいなら、例え成海さんに嫌われて会社を辞することになっても、成海さんへの想いを胸に一人で生きていく方が全然マシだ。

──成海さん。
成海さんが私に向けてくれた小さな笑みを思い出す。


私の気持ちは、固まった。
もう、怖くない。
まだ震える膝を立てて、立ち上がる。私は目の前に私を見ている西脇をきつく睨んだ。すうっ、と息を吸い込む。
「例え、建築の仕事ができなくなったとしても……それでも、私は西脇さんと一緒にいたくないですっ!」

ドンッ!

体に強い衝撃のあった直後、私の体は床に倒れ痛みと当時に頭を打って意識がくらりと揺れた。
「……っ」
視界に入った西脇が二重にぼやけて見える。
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