俺が優しいと思うなよ?


「……仕事であれだけ贔屓して構ってやって、ここでセックスしたときも十分可愛がってやったのに」
無表情に両目を細める西脇に、背中がゾクリと震える。
ヤバい、と脳が訴える。とにかく離れようと床に両手をついて力を入れる。「ハァ、ハァ」と体を起こして小さく息を切らす私の横で、西脇は腰を屈め顔を覗き込んでくる。
「あんなに可愛くオネダリしてきた聖は、一体どこに行ったんだ?」

今まで、こんなに西脇に対して恐怖を感じたことはなかったかもしれない。
私は彼に屈しない態度で首を左右に振った。
「聖、俺のところに来いよ。そうすれば何もかも上手くいく」
さっきまでの冷たい声と違い、憂いを帯びた声で囁いてきた。そして手が伸びてきた。
「!」
仰け反って避けても、その手は追いかけて私の頬に触れる。ビクリと全身が震えても、その手は離れていかない。もしこの手を振り払ったら、今度は何をされるかわからない。

固まる私に、西脇の口が開く。
「お前のことを一番考えているのは俺なんだぞ?それなのに、成海の匂いなんかマーキングされやがって。……浮気猫は抱いて上書きしないとな」
「?!」
やっぱり危険だと、すぐに立ち上がり逃げようとした。足首の鎖がジャラジャラと音を立てる。

しかし抵抗も虚しく西脇によって腰を掴まれて引きずり戻され、床に倒される。彼の片手で私の両手首は頭の上で床に貼り付けられた。
私より遥かに体の大きな西脇の足が、仰向けの私の体を押さえつける。
「お願い、やめてっ」
「この俺が、お前の体も才能も……」
体を動かそうと抵抗する私に、相手も体力で押さえつけてくるその痛みに「うっ」と声が出る。
大きな手が、薄手のニットの襟元を掴んだ。
「に、西脇さんっ」
ビックリして叫ぶ私の声は西脇に届いていたのだろうか。

「……聖を最初に見つけたのは、俺なんだ……誰にも渡すかよ。あんなクソガキに渡すかよっ!」
「やっ、やめてっ!西脇さん!……キャアッ!!」

眉間にしわを深く刻み、瞳をギラリと光らせた西脇は、容赦ない力で、ブチブチと鈍い音を部屋に響かせながら。

ニットを引き裂いていった。

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