俺が優しいと思うなよ?
それからすぐのこと。
玄関の施錠を外す音がして、何人かの声が聞こえ何かガタガタと音も聞こえてきた。
何か騒いでいる音に部屋のドアを開けて助けを求めようと、ドアノブに触れようとした。
──私が騒ぐことで成海さんに迷惑ばかりかけるかもしれない。でも会えたなら、たくさん頭を下げて謝ろう。
ぐっと、決心したとき。
「勝手に入るな」という西脇に声と、バタバタと近づく足音が聞こえた。
「バンッ!」
勢いよく開かれたドアと同時に、現れたその横顔に目を見開いた。
眉間に皺を寄せた険しい顔つきが端正さが手伝って凄みを増し、その鋭い視線が私へ向く。背の高いスーツ姿の体が同時にこちらへと慌てて近づいてくる。
そのはずなのに、何故かその行動がスローモーションのようにゆっくりに見えた。
まるで目に焼きつけるかのように、絶対に忘れないように。
「三波!」
その綺麗な顔は次第に驚きの顔から悲しそうに歪んでいく。
──……ああ。もう、会えないと思っていたのに。
好きな人の顔、好きな人の声が、こんな状況だというのに胸がキュッとしてしまうとは。
「しっかりしろ、三波!」
耳元で声がして、口を塞がれたネクタイがすぐに外される。
「……な、成海さん……」
成海さんが現れ、八方塞がりだった自分の何もかもが一気に緩んで全身の力が抜けていく。私の裂かれた服に強ばった表情を見せた彼は、さっと上着を脱いで私に掛けて包み込むようにそっと抱きしめてくれた。
「三波……一緒に帰るぞ」
私の冷たい背中を、成海さんの両腕があたためてくれる。シャツ越しの体温が私を生き返らせてくれる。
───もう、安心していいんだ。
少し震えていた彼の声に、私は掠れた声で「はい」と答えた。