俺が優しいと思うなよ?


事情聴取の協力のため、車に乗り警察署へ向かう。後部座席で成海さんと座っているが無言で車内はしん、としていた。
それでも成海さんの手だけは私の手をしっかりと握っている。
『もう大丈夫だ』
そう言っているようだった。


警察署に着いた私は待ち構えていた婦警さんに毛布に包まれて刑事さんのいる部屋へ連れていかれた。
この建物のどこかにいるであろう西脇とは別の部屋で、私はこの3日間の出来事を話した。そして質問にも正直に応じた。西脇が前の勤務先の上司だったことも、その頃に男女の関係があったことも第三者に知られることとなった。
でもそれらは身から出た錆と受け取り、後悔するしかなかった。


婦警さんと一緒に部屋から出た私は、初めて味わった現実に心身ともに疲れてしまっていた。帰宅が許可されたが変な緊張感が拭えないでいた。

「三波さんっ!」
聞こえた声に顔を上げると、廊下の先にある待合室に成海さんと響社長、そして倉岸さんの姿を見つけた。倉岸さんは私の毛布姿にショックを受けているのか、口に手を当て泣いているようだった。

婦警さんから成海さんへ、私が引き渡される。事情聴取の刑事さんが後からやって来た。私と変わらないくらいの年齢の男性だ。
「あの、もしかしたら再度話を聞かせていただくことになるかもしれませんので、その時はご連絡いたします」
「その時は彼女ではなく私にご連絡いただけませんか。連絡先はこちらに、私も一緒に伺います」
間髪入れずに成海さんは私の前に一歩出るとそう言って、サッと名刺を彼へ差し出した。まるで要人を警護するSPのようだ。
刑事さんは少し驚きながらも「そうですか」と名刺を受け取っていた。

響社長がクスクスと笑う。
「お姫様を守る騎士のようだね」
「危なっかしくて見ていられないだけですよ」
ムスッと不機嫌顔で答える成海さんの前で、倉岸さんは私を抱きしめた。
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