俺が優しいと思うなよ?
「もうっ。本当に心配したんだからねっ!」
「すみませんでした……」
泣かれるほど心配させてしまったことに、申し訳ないと心から反省する。
「体は?大丈夫なの?」
「はい。大丈夫です」
倉岸さんは悲しそうに、返事をする私に覆われている毛布をグルグルと見回す。
「恭介さんから聞いたわ。本当に酷い目にあって……着替えを持ってきたの。好みじゃないかもしれないけど、今着ているものよりはマシだと思うの」
「ありがとうございます」
倉岸さんはソファにある大きな紙袋を持ちだす。
「着替えでお部屋を貸してもらえるように話したの。あのお部屋で着替えましょ」
と促され、背中を支えられて歩き出すと、彼女は響社長へ軽く頷いた。
「恭介さんから電話があった時は本当にびっくりしたのよ。それで三波さんの服を買ってきて欲しいと言われて、慌てて買いに行ったの」
倉岸さんが高級そうなブティックのロゴの入った紙袋から取り出したのは、ロング丈のシンプルな紺色のワンピースと、ざっくりと編み込まれたクリーム色のカーディガンだった。どちらも上品さがあり、私の行きつけの衣料量販店には売っていないような品物だった。
「とても素敵な服……ありがとうございます。服代払います。いくらでしたか?」
高額な出費を覚悟しながら、私は緊張気味に聞いた。
彼女はクスクスと笑った。
「そんなこと気にしなくて大丈夫よ!これは恭介さんのポケットマネーで買ったんだから。請求はきっと三波さんじゃなくて、部長に行くと思うわ。三波さんはただありがたく受け取っておけばいいのよ」
「さっ、早く着替えましょ」と声をかけられて、私は羽織っていた毛布を外した。
肩から纏っているだけの引き裂かれたニットを見た倉岸さんは、グッと顔を顰めた。
「女の服を破るなんて……最低のクズよ」
低い声で言葉を吐き捨てた彼女の静かな怒りに、私はビックリして彼女を見つめた。その顔がハッと我に返ったのか気づいて私に軽く微笑み、優しい手つきでそのニットの裾に触れた。