俺が優しいと思うなよ?
「両手に赤い痣、膝に青い痣と後頭部に小さなタンコブ。……そして、首筋にキスマーク。頭のコブは大丈夫?聞き取りの時に保冷剤もらって冷やせたのよね?」
「はい。今は痛みも引いているので大丈夫です」
「受け答えもしっかりしているけど、気分が悪いとかはない?」
「はい。大丈夫です」
倉岸さんは私の体のあちこちを見て「そう」と頷いてた。
彼女は私の身支度の片付けをしながら苦笑する。
「三波さんのいない間、部長は大変だったのよ。ホテルからいなくなった三波さんを探し回ったり、仕事中何度もスマホを見て落ち着きがなかったり。見ているこっちまでソワソワする空気を流し込んできて、うちのチームだけ違う次元にいるような感じだったわ」
と、しみじみと思い出している相手に、私は逆に申し訳なさを感じた。
「本当にすみませんでした……みなさんにたくさんご迷惑をかけてしまって……」
猛省の意味を込めて、深々と頭を下げる。
倉岸さんは「違うの、違うの」と困ったように手を横に振る。
「謝らないで。確かに三波さんが行方不明の間、部長の空気は怖かったけど、彼は仕事に私情を挟むことなんで今までなかったの。今回は部長は仕事以上に大切な人に必死だったのかなって思ったのよ?」
──本当に、成海さんがそう思っているなら……。
しかし、そうじゃないと頭の中で打ち消す。
「成海さんが大切なのは、私のデザインなんです。他意はないですよ」
帰り支度をしながら話す私を、倉岸さんは両肩に触れて私を向かせた。その彼女の顔は悲しそうな、そしてどこか怒っているように見える。
「三波さん、本当はわかってるんじゃない?大丈夫、自信をもって堂々と向き合っていいと思うの。前にも言ったとけど、部長はきっと受け止めてくれるはずよ」
煮え切らない私に喝を入れてくれたのだとわかる。
「三波さん。部長のこと、好きでしょ?」
ダイレクトな質問に、思わず「えっ?!」とビックリして声が裏返った。倉岸さんはニッコリと笑ってピンクの唇を開いた。
「ホテルであなたが外したパールのネックレス、あの部長がレンタルなんてセコいことするわけないでしょ。それに、男が他意もなくあんな高価な宝石をただの部下にあげるなんてしないわよ。三波さん、男が宝石を贈る意味、ちゃんとわかってる?」
「え……」
戸惑う私に、彼女は悪戯っぽく笑った。
「「貴女を独占したい」って意味なのよ」