俺が優しいと思うなよ?


成海さんは私をタクシーに乗せ、一緒に彼のマンションに帰った。後部座席に隣同士で座る彼の手にはビジネスバッグと、西脇さんの家で見つけた私のカバンが一緒に握られていた。
タクシーの中で私たちは無言だった。成海さんが何を思っているのか気になるところだったが、横目で見る整った横顔はあまり機嫌の良さそうな感じではなかった。そして私も警察署で倉岸さんに言われたことが頭の中でリフレインしていた。

部屋の中へ私を入れると、成海さんは私のカバンを差し出した。
「これ、お前のだよな?西脇の部屋にあったのを刑事さんが見つけてくれて届けてくれた。念の為カバンの中を調べられているが不審なものはなかったから返された」
「あ、ありがとうございます」
カバンを手渡され、私は成海さんを見上げた。彼と一瞬視線が合ったが、それがスッと逸らされた。
「一応中身を確認してくれ。本当は警察署にいる間にすることだったんだが……」
と言ったところで、彼は間が悪そうに頭をガシガシと掻いた。

「……三波と西脇が同じ建物の中にいると思うだけでムカついて、とにかくお前を連れ帰ることしか頭になかった。……すまない」


『 貴女を独占したい』

ドクンッ。
成海の言葉に倉岸さんの言葉が重なって、心臓が痛いくらい脈打つ。
落ち着こうと、静かに息を吐く。
「謝らないでください」
と言って、彼の目の前でカバンのかを確認した。

数日ぶりの成海さんの部屋は、いくつかの郵便物がテーブルに置かれ、ソファの背もたれにはシャツなどの衣類が雑にかけてあった。綺麗に片付けられていた部屋より今の方が生活感があり、成海さんの人間味のあるところを垣間見れたような気がした。
「少し散らかっているが気にするな」
と、本人はそう言いながらもソファの服をササッと片手で抱えた。
私もニットのカーディガンを少し気を遣いながら脱いで汚れないように畳む。すると、成海さんが私に紙袋を差し出した。見上げると、彼は少し怒っているような感じだが顔がほんのりと赤くなっている。
そして、再度クイッと紙袋を小さく突き出した。

「シャワーを浴びてこい」
と。

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