俺が優しいと思うなよ?

「この会社はフレックスタイム制を導入しているの。午前十時から午後三時までちゃんと出勤していれば、朝は六時から十時までの出社時間は自由なの。他県から出勤している社員も多いから繁忙期に「遅刻」というストレスを回避する措置をしたのよ。ただし、出社時間から八時間勤務というルールはあるのよ」
そう説明する倉岸さんは綺麗にセットされたブラウンの巻き髪をふわりと揺らして、パッチリとした目元で微笑む。
彼女はチームに華を添えてくれる癒しの存在かもしれない。

「ちなみに、みなさんは何時に出勤しているんですか?」
と聞いてみると、
「出社時間はみんなそれぞれで、仁科係長は八時、町田さんと桜井さんは八時半、私は八時二十分よ」
と答える。
「あの、成海さんは…」
「彼は、私たちよりずっと早いみたい」
と、ふふっと小さく笑う。

「成海部長はね、仁科係長が七時半に出社した時、既にデスクで仕事をしていたそうだから。まるで仕事が恋人みたいね」


初出社日の週は彼女、倉岸麗香さんから社内のことや仕事の流れの説明を聞いて過ごし、彼女の仕事を手伝って過ごした。
成海チームは五名の少数でありながら、レベル高い仕事をする精鋭メンバーだということがわかる。

──三年のブランクがある私が、このチームでやっていけるのだろうか。

一抹の不安が過った。
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