俺が優しいと思うなよ?
金曜日の退勤時間の迫る頃、倉岸さんは今日の業務は終了とばかりに書類をトントンと整える。
「私から説明できることはこれくらいかな。事務仕事お手伝いしてくれてありがとう。来週からは本格的に成海部長と仕事をすることになると思うけど…」
と、彼女の話す語尾が段々と小さくなっていく。その顔は少し眉を八の字にして顔を近づけてくる。
「成海部長と一緒に仕事したらわかることなんだけど…」
目を泳がす彼女に、私は成海さんに何かあるのかと首を傾げた。
次第に頬を赤く染めていく彼女。私はもしかして、と「あっ」と声を上げてしまった。
すると、
「ちっ、違うの。違うのっ」
と、両手を前に出して横に振った。