俺が優しいと思うなよ?

──仁科係長はどんな女性でも、あんな感じに触れるのかな。

自分のデスクに戻っていく仁科係長を、どうやら無意識に見つめていたらしい。
頭を「パンッ」と、何かで叩かれた。
「いっ…」
と、びっくりして頭に手をやって見上げると、そこには眉間にシワを寄せて不機嫌そうな顔をした獣…成海さんが私を見下ろしていた。その手には青い厚手のファイルが握られるいる。

「ボーッとしてんじゃねぇ」
と聞こえた声は低く、獣が唸っているようだ。
「す、すみません」
「午後から現場確認に行く。パソコンチェックが終わったら、区画の図面を確認しておけ。昼飯の後、出かけるぞ」
「は、はいっ」
成海さんはそれだけ言うと、その青いファイルを仁科係長からのファイルの上に置く。
「あっ…」
仁科係長から預かったファイルのことを話そうとすると、
「そっちは帰ってからの打ち合わせで聞く」
と先に言われてしまった。
口をへの字に曲げたムスッとした成海さんの顔が、桜井さんに呼ばれて元へ戻っていく。


──なによ。ちゃんと仕事してますよ。

その成海さんの後ろ姿に、ベッと小さく舌を出した。

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