俺が優しいと思うなよ?
このオフィスビルにはビル内の企業と提携を結んでいる飲食店が二十店舗ほどあるそうだ。そのため提携のある企業の社員の昼食は割安でいただくことができる。また昼食の時間も混雑を避けるため、午前十一時から午後二時までランチができるのも嬉しい対策だ。
しかし、私のトートバッグの中にはいつものように昼食のおにぎりが入っている。おにぎりの数と中身の具はその日によって違う。ちなみに今日は焼きたらこのおにぎりが三つだ。
もちろん、飲食店でランチをしてみたい。倉岸さんからもお誘いもあったが、「持参しているので」と泣く泣く遠慮する。
贅沢が私を許してくれないのだ。
このおにぎりの具の焼きたらこも、昨日の閉店間際のスーパーに行き半額セールで手に入れたものだ。
お昼休みの誰もいない事務所で一人、席でおにぎりを頬張りながら建築雑誌をペラペラと捲る。
そのページには山の緑の中に佇む丸太を組み上げたログハウス。
玄関テラスにほんのりと柔らかな明るさを放つランタンを灯し、ロッキングチェアに揺られながら時間の流れをゆっくりと楽しむ。澄んだ星空を眺めて好きなコーヒーを味わう、なんてステキなシチュエーションだ。
「ログハウス、いいなぁ」
こんなデザインは私には描けないだろうけど、と思ってしまう。