俺が優しいと思うなよ?
「…そう。そんなことがあったのね」
事務所に戻ってきた私の様子が変だったことに気づいた倉岸さんが仕事の合間に声をかけてきた。
「ちょっと休憩しない?」
と、彼女は私を給湯室へ連れ込んだ。
私は都市開発の現場で建築デザイナーとしての仕事ができなかったことが情けなくて、自己嫌悪に浸っているのだと打ち明けた。
「本当に、何も…あんなに天気が良くて、梅の香りだって漂っていたのに。教会のイメージが浮かんでこなかったんです。私はこのために会社に呼んでもらったのに…」
「三波さん…」
困り顔の彼女の前で、私はきっと崖っぷちに立たされた酷い顔をしているに違いない。内から溢れる焦りと恥が止まらない。
泣きたくないのに視界が滲んでいく。
「三年もブランクがあった私を、それでも即戦力として迎え入れたいと仰ってくれた社長にも、私の才能が欲しいと言ってくれた成海さんにも申し訳なくて」
すっかり自信喪失した私に、倉岸さんは「三波さん」と呼ぶ。
「まずはあたたかいコーヒーを飲みましょう。社長も成海部長もプレゼンまでの期限が迫っても、三波さんを追い詰めることはしないと思うわ。彼らだってプロの建築士だもの、建築デザイナーのあなたの対応もちゃんと把握しているはずよ」
と、柔らかく微笑んで私の肩をポンと軽く手を乗せた。