俺が優しいと思うなよ?

「成海さんっ。私、着替えを持っていません!泊まるなんて聞いていなかったので……やっぱり帰りますっ。では!」
私はこのチャンスを逃すまいと、荷物と一緒に置いたカバンを取ろうとした。

「その必要はない」

成海さんはしれっとした顔でガシッと私の腕を掴むと、白いビニールの買い物袋を私の目の前に突き出した。
「え?」
受け取って中を見ると、歯ブラシや洗顔、お泊まりセットの化粧品類……そして、小さなパッケージに入った、ピンクのパンツ。

「?!?!?!」

驚きと動揺と恥じらいが一度にやってきて頭がパニックだ。

──な、成海さんがピンクのパンツをっ??

手のひらに載せたピンクのパンツの小さな袋を、私は穴が空くほど凝視していたらしい。

「鼻息を荒くするな。さすがに俺のパンツを履かせるわけにはいかないだろ」

ゆっくりと視線を上げた先の彼の顔は、ムスッとした横顔だが耳が赤かった。
ドクンッ、と心臓が脈打つ。
そして伝染したように、私も顔が熱い。
「……あ、ありがとう……」
やっと言えた一言に、成海さんは「ああ」と言い残してリビングを出ていった。

ドキドキが止まらない気持ちを落ち着かせようと、ピンクのパンツから視線を逸らす。そこには成海さんの生活空間が広がっている。調味料が綺麗に並ぶキッチンカウンター、二人掛けのダイニングセット。リビングに大きなテレビと黒い大きなソファとガラスのローテーブル。
「……」
白と黒を基調としたシンプルな部屋は成海さんらしいと思った。
朝はダイニングテーブルでコーヒーを片手に新聞を読んでいるのかな、とか。夜はお風呂上がりに黒いソファでウイスキーを飲みながらテレビを見ているのかな、とか。そんなことを頭に浮かばせながら広い部屋をぐるりと見渡す。

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