俺が優しいと思うなよ?
「……」
お風呂から出てみれば洗濯かごは空っぽで、洗濯機が静かな音を立てて動いていた。着替えの棚には肌触りの良さそうなバスタオルと成海さんが着ていたような黒いトレーナーが置いてあった。
しかし。
「……なんで、「下」がないのよ?」
「上」だけのトレーナーを着てみれば、太ももが露になって心許ない。三十路過ぎてから、こんな格好なんて家でもしないのに。
ぐぐううう〜〜ぅ。
空腹に堪えられず食べ物を要求する私のお腹。成海さんがご飯を作ってくれているのだから、いつまでも恥ずかしがっている場合ではない。
「ああっ、もうっ」
顔から火が出る思いのまま、私は洗面所を後にした。
「お風呂、ありがとうございました……」
私は半分に畳んだバスタオルを、太ももを隠すように両手で前で握りしめた。恥ずかしさいっぱいの情けない顔をしているのはわかっている。
成海さんは黒いエプロン姿でキッチンでフライパンを手にしていた。
「なぜバスタオルなんて持ってる?」
「え?べつに……」
不思議そうに聞かれて、挙動不審な答え方をする私。
彼はそんな私をチラッと見るだけで、
「時間がなかったから簡単にナポリタンにしたから食えよ」
と言って、焼けたケチャップのいい匂いがする美味しそうなナポリタンの皿を差し出した。
「おっ、美味しそうっ!」
具だくさんのナポリタンに思わず私も両手を出した。
「ありがとうございますっ」
ぐっ、きゅるるうぅぅ〜〜。
「!!」
気が緩んでしまったせいか、私の遠慮のないお腹の虫が叫んだ。恥ずかしくて全身がボッと火がついたように熱い。
「ぷっ、あはははっ!!」
声を上げて面白そうに笑う成海さん。
──か、可愛い。
ギョッと驚きながらもそう思ってしまい、私の中で小さく「トクンッ」と鳴る。
「なんだ、腹が減ってるなら先にそう言えばいいのに。早く食え」
と、クックッとまだ笑っている彼を横目に、私は情けない顔でテーブルのナポリタンを前にしてフォークを握った。