俺が優しいと思うなよ?
ドキドキと加速していた心臓も、ナポリタンを食べ終わる時には落ち着いた。
お礼の足しにもならないと思いながら食器を洗っていると、
「これも頼む」
と、成海さんはシンク端ににコップなどを入れる。遠慮がちな彼を横目に「はい」と答えて洗剤を洗い流す私を、彼はしばらく見ていた。
「ん?」
と振り向けば、成海さんは口に手を当てて顔を背く。
「コーヒー飲むか?」
と言いながら私に背を向けて、棚からカップを取り出した。
気のせいか、彼の耳が赤いと思った。
リビングのソファで成海さんと一緒にコーヒーを頂く。ほろ苦さの中に甘味を感じる美味しいコーヒーだ。成海さんが「実家からもらったコーヒー豆を使ったんだ」と教えてくれた。
リビングをきょろりと見渡す。洗面所や浴室を見て思ったことがあったのだ。
「成海さん、聞いてもいいですか。気になったんですが……」
「なんだ」
成海さんは空腹を満たしたせいか機嫌が良さそうだ。
「あの、聞きそびれたことなんですが……成海さん、私をここに泊めていいんですか?成海さんはこの前、詩織さんと結婚の約束をしていると言っていましたので大丈夫かな、と思って」
と、ここまで話すと彼は顔を歪ませて「はあ?」と私を睨んだ。
成海さんは静かにカップをローテーブルに置くと、そのカップを持っていた手がそのまま私の顎をグッと掴んでグイッと持ち上げた。
今度は私の方が驚いて、
「んぐぐっ……!」
と、力ですぼめられた口で声を出した。