エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
と、その時。誰かが社長室のドアをノックした。叶未を見つめたままで「はい」と答えると、ガチャっと扉が開く。
「失礼します。大和、そろそろ時間では――」
つかつかと入ってきたのは航紀だった。黒いマントに真紅のベスト、胸もに上品なジャボのついたヴァンパイアの衣装を身に纏っている。
なるほど、クールな風貌の航紀によく似合う仮装だ。
感心して彼を見ていると、航紀の目が叶未の衣装をとらえ、一瞬細められた。その後、今度は俺の格好を上から下まで眺め、酷薄そうな薄い唇の端をつり上げる。
「夫婦で動物をテーマにした訳ですか。観月さんは愛らしいですが……」
「なんだよ、俺だってかわいいだろ? 結構気合の入った仮装なんだぞ」
俺は牙を剥くように大きな口を開け、肉球のついた毛皮のグローブで〝ガオー〟のポーズをする。
襟にふさふさとしたファーがついたジャケット、髪にはピンでとめるタイプのオオカミの耳、腰にはふさふさとした尻尾、そして短い鎖がついた首輪。
「しつけの行き届いていない、駄犬といったところですか」
「犬じゃない! オオカミ男!」
「大和、ビークワイエット。吠えていないで会場に行きますよ」
「お前な……」