エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
完全に俺を犬扱いする航紀にわなわな震えていたら、叶未がクスクスと笑う。
……ま、いいか。犬でもオオカミでも、叶未が笑ってくれるなら。
単純な俺は彼女の笑顔を見ただけで心が丸くなり、冷徹なヴァンパイアの指示に従って、四階にある会場に向かった。
毎年のことだが、会議室の様相はなかなかカオスだった。魔女にゾンビにミイラ男といった定番の西洋風の仮装をする者のほか、ナースや警察のコスプレ、新撰組隊士の格好をした社員までいる。
点在する会議用の長机にはオレンジ色のクロスがかかり、ハロウィンらしい軽食やお菓子が並んでいた。
俺たちはその合間を縫って、スタンドマイクが設置された部屋の一番奥に移動する。そこにいた司会の社員に叶未が目配せをすると、司会者がマイクの前に立ち、パーティーの開会を宣言した。
続いて俺も、社長として一応挨拶をした。堅苦しいのは苦手なので、社員たちの日頃の頑張りを労う言葉をかけた後は、「今夜はみんなで楽しみましょう。乾杯」とフランクに乾杯の音頭を取った。
さて、後は叶未と楽しい夜を過ごすだけだ……。と、マイクから離れて彼女のもとに戻ろうとしたのだが。