エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「あれ? いない」

 近くの壁際で俺の挨拶を聞いていたはずの叶未の姿が、いつの間にか見えなくなっていた。同じくそばにいた航紀に聞こうかと思うが、なぜかその航紀もいない。

 キョロキョロしながら会場をゆっくり歩いていると、十人ほどの女性社員たちが俺の周囲を囲み、その全員から一緒に写真を撮ってくださいと誘われた。

 例年なら気軽に承諾していたが、今の俺は妻帯者。叶未はその程度のことで怒るタイプではないと思うが、俺自身の気が進まないので、丁重にお断りする。

「ごめんね。今、秘書の観月を探していて忙しいんだ。誰か、見ていないか?」

 そう尋ねると、女性社員たちは「えー?」、「知りません」などと言いながら、一様に首を傾げてしまった。どうやら誰も叶未の行き先に心当たりはないらしい。

「ありがとう。他をあたるよ」

 仕方なくそう言って、また会場内をウロウロとするが、叶未も航紀も見つけられない。

 会場の外に出たのか……? そう思いながら出入り口を目指していると、よそ見をしていたせいで誰かにぶつかってしまった。

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