エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
会社の人への報告は、安定期に入ってから。そう思っていたのに、勝手になんてことを!
やきもきしながら電話を続ける彼を見守っていると、大和さんは最後、なぜか不服そうに口を尖らせて受話器を置いた。
「……どうしました?」
「会社の内線を私用に使うなと怒られた。ついでに『大和二世、手がかかりそうですね』なんて嫌み付きだ」
「ふふっ、紫倉さんらしい」
クスクス笑っていたら、おさまったと思っていた吐き気が再び舞い戻ってきて、私は近くの壁に手をつき口元にハンカチをあてた。
「叶未?」
すぐに歩み寄ってきた大和さんが、気遣うように私の背中に手を置く。
「大丈夫です。ただのつわり、ですから……」
「ただの、なんてことはないだろう。叶未、今日は無理をしないで帰るんだ。子どものためにも、自分を大切にしないと」
優しく背中をさすりながら、大和さんが私を諭す。自分を大切にする。それが私の苦手分野だとよく知っている彼だからこその言葉に、胸が熱くなる。
「ありがとうございます。私、もっとしっかりしなくちゃ」
「そんなに気負う必要はない。妊娠と出産だけは代わってやれないが、後のことは俺を頼ればいい。俺たちふたりの子だ」
「大和さん……ありがとう」
あなたはいつでも私が一番欲しい言葉をくれて、落ち込んだ気持ちを前向きにさせてくれる。
片想いしている頃からずっと変わらない、まばゆい笑顔で私の心を魅了する。
私たちの間で生まれた恋という名のジュエリーは、これからもふたりの物語を溶かし、万華鏡のように色を変えながら美しく輝く。永遠に。
FIN


