エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「では、お先に失礼します」
今日は金曜日。週明けに雑務が溜まらないよう三十分ほど残業した後、私は椅子から立ち上がった。
自分のデスクでデザイン画をチェックしていた社長がちらりと視線を上げ、私を見る。
「待って観月、忘れ物してる。もしかしてわざと?」
「えっ?」
キョトンとする私に小さくため息をこぼして席を立った社長は、私のデスクの上をトントンと人差し指で叩いた。
「鍵までかけて大事にしまってくれるのはいいけど、忘れたら意味ないだろ。契約書」
「あっ。す、すみません!」
忙殺されて、すっかり忘れていた。というか、時間が経つにつれて『あれは白昼夢だったのでは?』とすら思えていたので、社長の言葉で急に結婚話が現実味を帯びる。
私は隣で彼が見守る中、引き出しから契約書を取り出し、迷いながらも彼に問いかけた。
「あの、本気なんですか? ここに書かれていること」
「もちろん。というか、どうしてそんなに俺を疑うのか教えて欲しいんだけど」
「だって……私たち、どう見ても不釣り合いですし」