エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
この契約も、私が承諾したらいったい何人の人を不快にさせるかわからない。
彼への恋心に蓋をしてきっぱりお断りする方が、安全で楽な道だろう。でも、社長はそれを許してくれない。いったいどうしたらいいの?
私は契約書を胸に抱き、ためらいがちに口を開く。
「……わかりました。よく考えて、月曜日にお返事します」
「うん。いい返事を期待してる。お疲れさま」
頬に触れていた手が頭の上に移動し、ポンポンと軽く叩かれる。それだけでびくっと肩が跳ねて、頬が熱くなる。心の中では「ひゃあ」と黄色い悲鳴を上げていた。
「で、では私はこれで」
これ以上彼といると心臓が持たなそうなので、素早く頭を下げてそそくさ社長室を出る。
ばっくんばっくん鳴る鼓動の音を聞きながら足早に廊下を歩き、誰もいない更衣室に入る。そして自分のロッカーの前まで来ると、扉にゴツッと額を打ち付け大きく息をついた。
「痛い。ってことは夢じゃない。どうしよう……」