エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「お願いします」
「確認いたしますので、少々お待ちください」
そして、十月三週目の日曜日、午後。私と社長は、区役所の時間外窓口にいた。……とうとう入籍だ。
彼のマンションに引っ越してきたのも、今日の午前中。業者に運び入れてもらった荷物を軽く整理しているうちにお昼になったので、彼が車を出して外でランチを済ませ、そのまま区役所に来た。
対応してくれた初老の男性職員はどうやら老眼らしく、かけていた眼鏡を上にずらして書類をジッと見る。
婚姻届以外の書類もそろっているはずだし、不備があった時用の印鑑も持参している。
それでもなにかミスを指摘されるのではないかと、ドキドキしながら職員の動向を見守る。
「はい。受理します。おめでとうございます」
眼鏡をもとの位置に戻した職員がニコッと微笑んでくれると、私と社長はホッとして目を見合わせた。
「改めてよろしくな、叶未」
「こちらこそ、よろしくお願いします。……や、大和さん」
お互いを下の名前で呼ぼうと決めたのはついさっき、ランチを食べながらだ。慣れなくて、口にする度にいちいち照れてしまう。
無事に入籍はしたけれど、名実ともに夫婦らしくなるのは、まだまだこれからだ。