エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
過去、一度だけ交際した相手の紅蘭からひどい裏切りを受けてから、恋愛はこりごりだと思っていたのだが……叶未が相手なら、あるいは楽しいかもしれない。
そんな想像をするくらい、女性としても彼女に魅力を感じるようになっていた。
しかし、叶未に心惹かれる男は他にもたくさんいるのだろうと思うと、なかなかアプローチはできなかった。彼女に恋人がいるのかも、どんな男が好みなのかも知らない。
最近ではいくら俺にでもプライベートは見せられないと、本人に言われてしまう始末だ。
その状態で彼女に告白するというのは、痛い失恋を経験して臆病になった男には、なかなかハードルの高いものだった。
しかしついに、叶未の気持ちをほんの少し垣間見れる、そんな瞬間が訪れた。
あれは、俺の母がこちらの迷惑を省みず、アポなしで社長室を訪れた日のことだ。見合い話を断ろうとする俺を説得するため、母は叶未にこう頼み込んだ。
『あなたからも大和に言ってくれない? もういい年なんだから、結婚について真面目に考えてお見合いをしろって』
『お見合い……ですか?』
その時、叶未の表情が一瞬強張ったように見えた。俺の母親の強引さに辟易しているのかもしれないが、それだけではないような……。