癒しの君と炎の王 2~炎の王は癒しの娘をさらに溺愛中~
「だっ、誰ですか?いつから後ろに?」
アンは混乱しながら銀髪の男に話しかけた。
銀髪の男は悪びれた様子もなく、
「これは、失礼した。我が名はシルバー。女性の二人旅は危険なのでお供しよう。」
と、右手を自分の左肩に当てながらお辞儀をした。
「いえ、結構です!」
とアンは、即座にビシッと断った。本当は女二人で不安だったが、どこの馬の骨とも分からない男を、王妃となろうソフィアの側に置かせたくなかった。しかし、銀髪の男は諦めず、
「怪しい者ではありませんよ。疑り深い女性ですね。これでも女性の二人くらい余裕で守れ…。」
と、途中まで言いかけると、男の目が何かに感づいたかのようにキラッと光り、みるみるうちに銀髪の男の全身が銀色の毛に覆われながらボコボコと膨らんでいき、顔は鼻が伸びたかと思うと狼の顔になり、太く伸びた四肢も毛に覆われ、大きな鋭い爪が…。二人の目の前で、先程の銀髪の男が、巨大な狼に変身したのだ。
ソフィアとアンはあまりの出来事に、二人で抱き合いながら、腰を抜かすように、その場に座り込んだ。
そして巨大な狼は、ソフィアとアンに向かって跳びかかって来た!
かと思われたが、巨大な狼は二人の頭上をひらりと飛び越えた。
えっ?
二人が振り返ると、木々の間にはたくさんの狼がおり、いつの間にか二人の周囲は狼達に取り囲まれていたのだ。
巨大な狼は、目鼻間に皺を寄せ、鋭い牙を見せると、グルルルッと喉を鳴らした。
すると、たくさんの狼達は、一斉に散り散りに去って行った。