シークレットベイビー② 弥勒と菜摘


「そうだね⋯⋯ じゃぁ、櫂くん、考えてみて。
わたしね、中学校の時、お母さんとお父さんが死んじゃったんだ」

「そうなの? 」

「うん、でも、わたしには櫂くんみたいに、おじいちゃまもおばあちゃまも、弥勒さんもいなくて、」

「うん」

「周りの人みんないなくて、櫂くんと一子2人だけになったかんじ。
しかも、お金も、家も、シッターさんみたいな人もいないの。櫂くんだったらどうする? 」

「えっ、オレ、ぜったい、泣く。
うん、オレ泣くなぜったいに」

「うん、だから、わたしもすごい泣いたよ。でも、どうしようもないんだよ、泣いても」


と言ったら、


「⋯⋯ 一子を、たよるしかねーな⋯⋯ 」


ぷっ
わたしも一子たよりそう、笑える、悲しくて笑える。
一子はぐーっと大の字にまっすぐ寝ていて、もう、触るだけで安心しそう。


「だからね、そんな人もいるんだよ。」

「⋯⋯ 」

「お金がなかった。助けてくれる人もお兄ちゃん1人しかいなかった。こうして櫂くんが過ごしてる横にも、そんな人がいるかもしれない」

「そっか」

「そうなんだな、って思うだけでいいけどね」


櫂くんには。なかなか想像出来ないだろうな。
こんなに沢山の人に囲まれてるから。
わたしだって櫂くんが困れば何でもしてあげると思う一人だ。


「配慮っていうの。周りを考えるってこと。
お金持ちは目立つから余計ちゃんとしないとね」


なんて話してたら、一子が起きて


「ちゃんとする」


と言う。


「一子も櫂くんも、えらいねー」

「えらい」


と一子が言うから、面白くなって、櫂も大笑いした。

< 11 / 72 >

この作品をシェア

pagetop