シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
「そうだね⋯⋯ じゃぁ、櫂くん、考えてみて。
わたしね、中学校の時、お母さんとお父さんが死んじゃったんだ」
「そうなの? 」
「うん、でも、わたしには櫂くんみたいに、おじいちゃまもおばあちゃまも、弥勒さんもいなくて、」
「うん」
「周りの人みんないなくて、櫂くんと一子2人だけになったかんじ。
しかも、お金も、家も、シッターさんみたいな人もいないの。櫂くんだったらどうする? 」
「えっ、オレ、ぜったい、泣く。
うん、オレ泣くなぜったいに」
「うん、だから、わたしもすごい泣いたよ。でも、どうしようもないんだよ、泣いても」
と言ったら、
「⋯⋯ 一子を、たよるしかねーな⋯⋯ 」
ぷっ
わたしも一子たよりそう、笑える、悲しくて笑える。
一子はぐーっと大の字にまっすぐ寝ていて、もう、触るだけで安心しそう。
「だからね、そんな人もいるんだよ。」
「⋯⋯ 」
「お金がなかった。助けてくれる人もお兄ちゃん1人しかいなかった。こうして櫂くんが過ごしてる横にも、そんな人がいるかもしれない」
「そっか」
「そうなんだな、って思うだけでいいけどね」
櫂くんには。なかなか想像出来ないだろうな。
こんなに沢山の人に囲まれてるから。
わたしだって櫂くんが困れば何でもしてあげると思う一人だ。
「配慮っていうの。周りを考えるってこと。
お金持ちは目立つから余計ちゃんとしないとね」
なんて話してたら、一子が起きて
「ちゃんとする」
と言う。
「一子も櫂くんも、えらいねー」
「えらい」
と一子が言うから、面白くなって、櫂も大笑いした。