シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
櫂は珍しく緊張して、黙って両足を揺らしていた。
亜紀ちゃんはうつむいて黙っている。
「わたし、菜摘って言います。
あの子は櫂くんの従姉妹の一子っていうの」
と話しかけたら、パッと亜紀ちゃんがこちらを見た。大人しいけど溌剌とした明るい雰囲気だ。
「あのね、櫂くんが、亜紀ちゃんに、謝りたいんだ」
「もう、謝ってもらいました」
と横を向く。
5年生ぐらいって男の子より女の子の方がかなり大人っぽい。同じ学年じゃないみたいに、亜紀ちゃんは複雑そうな、大人っぽい表情と話し方だ。
櫂くん、これは、ほんとに頑張らないと、ちゃんと成長しないと、と思った。
「そうみたいだね⋯⋯ 。
でも、上手く出来なかったみたいね、櫂くん」
「⋯⋯ 」
「亜紀ちゃんも櫂くんも、軽く目を閉じてみて」
素直に二人とも目を閉じた。
菜摘も軽くふんわり閉じてみたら、風や、木の匂い、瞼の裏に皮膚に注がれている太陽のあたたかさ、眩しい光、を感じて菜摘はまた目を開ける。一子は、やはり同じ場所で砂遊び中、ゆっくり時間が流れていた。